おくどさんと水屋箪笥

おくどさんの由来

「おくどさん」とは京言葉で竈(かまど)のことを指しています。

竈は別名で「くど」とも呼ばれるのですが、そこに「お」と「さん」を付けて「お竈(くど)さん」と呼ばれています。
つまり竈に敬意と親しみが込められた言葉です。

「おくどさん」は京の人々の暮らしの中心にありました。
人の暮らしを豊かにする「食」に欠かすことのできないもので、大切な煮炊きをする調理場だったのです。

また、「おくどさん」は、土間など家の中で煮炊きなどをおこなう空間自体を意味して使われることもあります。

京都では今でも「おくどさん」との言葉を使う方がいらっしゃいます。
特に年配の方が使う言葉として知られています。

京町家は通り庭(土間)におくどさん

京町家はうなぎの寝床と言われるように、通りから奥に長い作りになっています。
そのため、通り庭と呼ばれる土間におくどさんが鎮座していました。

おくどさんは暮らしの中で大切に使われてきた暮らしに欠かせないものです。
土間の天井は、火袋といい吹抜けになっており瓦屋根にはガラスの天窓があり、調理場に光が差し込むようになっています。
おくどさんや鍋から出る煙を外に出すように土間の天井を高くするのは昔の人の知恵なのです。

昔は京都だけでなく、各地でおくどさんが大切に使われてきました。
ちなみに、京都以外の関西圏では「おくどさん」ではなく「へっつい」と呼ぶこともあります。

現代のシステムキッチンの前身とも言われているおくどさんは、日本を代表する文化の一つと言って良いでしょう。

京町家の火袋(と言われる吹抜け)におくどさんは設置(防火の意味も)

京町家で親しまれている「火袋」とは、吹抜け空間のことです。

火袋は、煙だしと防火上の配慮がなされており画期的な空間です。
火袋は主に土間の上部空間になっており、おくどさんや鍋から出る熱や煙を建物から吸いだすために吹抜けになっているのです。

また、高窓が設置されている事が多く、採光機能も果たしています。
又、緊急の火事の時は、天井から火の粉が飛び抜けて隣屋に飛び火しない構造としています。
火袋は伝統的な防火設備と言って良いと思います。

昔の人々の知恵により誕生した火袋は、生活の知恵からでた必然の住まいの設計ですね。

生活の様式が変わりおくどさんが無くなり(機能的なキッチンに)

おくどさんは食を通して人の暮らしを豊かにしてきた大切なものです。
確かに薪で炊く手間はかかりますが、お米を美味しく食べる事のできるおくどさんは、とても素晴らしいものだと思います。

しかし、生活の様式が変わり、徐々におくどさんが見られなくなってきました。
現在残されている京町家でも、おくどさんの姿を見ることが少なくなっています。

京町家はリフォームされ、現代人が住みやすいように変えられてしまっているためです。
土間がなくなり、そこに設置されるのは機能的なキッチンです。
そのため土間の通り庭が無くなり、京町家の平面が変わってしまいました。

時代とともに変わりゆくのは仕方のないことかもしれませんが、なんだか寂しいような気がしてなりません。
使われなくても飾り物としておくどさんを残されている所も少なくありません。