コラム一覧

建築のJASとJIS

住宅素材の規格は

住宅に使われる建材には木材、鋼材、コンクリート、石材、溶剤などがあります。
生活基盤となる住まいは安心・安全で長持ちすることが求められます。
建築に関する法律は複数存在しますが、家づくりには建築基準法が深く関わっています。

建築基準法とは安全で快適に過ごせる建物について最低限のことを定めたルールです。
時代とともに法改正を伴うこともありますが、建築基準法では建物の敷地、設備、構造、用途などが定められています。
建築基準法で住宅素材の規格について、建物の基礎、主要構造部に使用する建材はJISとJASに適合するように明文化されています。

JASは

JASとはJapan Agricultural Standardの略称で「ジャス」と呼ばれます。
食品・農林水産品の成分、性能、品位に関する規定で、国に登録認証された機関からJAS規格を満たすことが認定されると、JASマークをつけることができます。

食品・農林水産品は食べ物のイメージがありますが、建築にも関係があります。
建材として使用される木材や和室の畳はJASの対象です。

木材で規格されている内容には、乾燥材の含水率、保存処理表示、強度性能表示があります。
木材の含水率とは木に含まれる水分量のことです。
建築に使用される木材は予め乾燥して使われますが、その含水率によって建物の予後が変わります。
木の種類、心材、辺材によって含水率に差があり、20%以下にすることが望ましく、乾燥が不十分だと建築後に不具合が起こります。
木材は徐々に乾燥して収縮するため、建物の完成後に乾燥が進むと建て付けが悪くなったりゆがみが生じます。
最悪の場合、木材が変形して割れるおそれもあります。
乾燥材のメリットは建築物の強度が増し、気密性、保湿性も良くなります。

保存処理とは、木材の防腐・防虫処理のことです。
JAS規格では木材に使用する薬剤と有効成分の吸引量が定められています。
強度性能表示は目視、機械によって木材の強度を確認します。
木材の基準強度は木の種類、等級によって決まります。
JAS規格を満たした木材は品質・性能が安定しています。

JISは

JISはJapan Industrial Standardの略称で「ジス」と読みます。
正式名称の日本工業規格と呼ばれることもあります。
JISは工業製品について定められる日本国内の国家規格で、工業標準化の促進が目的です。
自由化すると無秩序で複雑化してしまう事象を取り決めることで、安全性・公正性の確保、技術革新の向上を図ります。

JISの規格数は1万を越えます。
医薬品、農薬、化学肥料、農林水産品を除く工業製品が対象で、自動車、鉄道、船舶、鉄鋼、化学、電化製品、情報処理、日用品などに幅広く適用されます。
身近にありふれた製品もJIS規格で標準化されています。
例えば乾電池や蛍光灯はサイズ、出力数が統一されているので、メーカーが異なっても製品に大きな違いはありません。
子供服にフードひもが使用されなくなったこともJIS規格が影響しています。

JISには任意の規格と強制力を伴う規格があります。
強制力を持つ場合、法規に引用されて義務づけられるため、違反すると一般的に罰則が適用されます。
現在177の法律、政令、省令などにJISが引用されています。
強制法規には土木・建築の項目があり、製図、太陽熱温水器、コンクリート、くぎ、接着剤、パーティクルボード、壁紙、ガラス用フィルムなどについて規格されています。

住まいの素材・木材はJAS(住まいは工業製品だけでは作れない)

JASとJISは対象が異なりますが、製品の品質と安全性を確保する点は共通しています。
建築分野では建築基準法により、JASとJISは必要不可欠です。
安心で快適な住まいをつくるには、素材の安全性と優れた建築技術が求められます。

日本の住まいには木材が欠かせません。
日本は豊富な森林資源を保有しています。
国土の約2/3にあたる2500万haは森林で、その4割は人工林です。
木材の自給率は低く30%強で、健全な森林サイクルを保つためには積極的に木材を利用して循環させることが大切です。
H22年に公共建築物等木材利用促進法が制定され、建物の木造化が推進されています。
2013年にはCLTがJAS規格に加わりました。

CLTとはクロス・ラミネーティッド・ティンバーの略称で、新しい木質建材として注目されるパネル板です。
CLTは1990年頃にオーストリアで普及し始めた建材で、ヨーロッパ、アメリカなどを中心に利用が広まっています。
JASは住まいに使用される素材・木材の品質の判断材量になります。
JAS規格の木材は木の種類、寸法、等級が決まっていて、日本国内であれば安定した品質の木材を入手できるので、安全性の高い住まいづくりに役立つでしょう。

建築設計とCAD. BIM

建築設計とPCでできる事(設計、工程管理、原価管理等)

建築設計には設計図が必要です。
設計図には基本設計図、実施図、施工図、竣工図があり、これらの図をもとに施工業者は住宅を建てます。

基本設計図は建物の形や構造、設備などを把握できるように図面化したもので、配置図、平面図、立面図、断面図などがあります。
建物の新築・増改築を行う場合、建築工事に入る前に建築確認申請を行って確認済証の交付を受けなければなりません。

建築確認申請では建築主事である役所か指定確認検査機関が、設計図をもとに建物が法令に適合しているかを確認します。
建造物の規模と構造にもよりますが、原則的に設計図の作製は建築士が行います。
図面は建造物の修繕・リフォームなどの際に必要になるので、必ず受け取り失くさないように保管しましょう。

設計図はひと昔前までは手書きで行われていましたが、PCを使用して図面化されることが一般的になりました。
PCを使用することで設計図の作成作業が容易になり、web環境に接続することで設計図のデータを送受信できます。

建築には建物の設計者の他に施工業者、建材・設備の下請業者など多くの人が関わります。
設計データを共有することでスピーディーに作業が進み、施行ミスが少なくなります。
工程管理と原価管理ができる機能性も注目されています。

CADは(特徴、できる事)

CADはコンピューター上の設計支援ツールで、製作した図面は解析・処理できます。
1960年頃に航空機の設計で利用され始めました。
建築のほかに機械の設計にも使われています。

CADは手書きに比べて線や図形を簡単に作成でき、移動、消去、コピーが可能です。
特定のコマンドを使用することが求められるので、操作テクニックが必要です。
CADの欠点はツールだけでは建築設計が成り立たないことです。
基礎となる設計の構想がないと、具体的な図面を作製することはできません。

CADには二次元CADと三次元CADがあります
二次元CADは構図が平面になるため、図面化する際に立体を平面に変換する必要があります。
設計上のミスが起こりやすく、整合性が取れない図面は修正が必要です。
設計図を確認する際は平面図から立体図をイメージしなくてはならないので、図面を認識するために空間把握能力が求められます。
図面を見て正確な情報を得るのに時間がかかり、誤解が生じやすいデメリットもあります。

三次元CADでは立体的に図面を作成します。
様々な角度から設計図を確認することが可能です。
二次元CADと比較すると設計ミスは少なくなります。
建築設計でCADを用いるなら三次元CADが優位です。

三次元CADは二次元CADより初期投資がかかるほか、高性能なパソコンが必要とされます。
CADは二次元CAD、三次元CADともにモデリングと作図力が求められるので、ツールの使用だけに頼らないことが大切です。

BIM は(特徴、できる事)

BIMはビルディング・インフォメーション・モデリングの略称で、三次元CADと同じく3Dモデルです。
BIMでは企画、基本設計、実施設計、維持・管理を一貫して行えます。
設計図は整合性を保ちやすく、設計上のミスが少なくなります。
図面の変更も一括して行えるので修正作業も簡単です。

BIMは建築物のイメージを共有しやすく、施工主と設計者、事業者間での意思疎通を図ることができます。
設計図は視覚的に分かりやすいだけでなく、パーツ、図面ごとに切り出すことが可能です。
短時間で建物の詳細を把握でき、業務プロセスが効率化されて作業スピードが上がります。

BIMの設計図には寸法、素材、原価などの情報も加わります。
必要な建材と設備、部品の数を把握することが可能で、予算のシミュレーションにも有効です。
BIMは設計監理をしているので、建物の施行後に建造物の補修が必要になったり、設備に不具合が出た際にも便利です。
各部品・設備のメーカーや製造年月日などを確認できます。

BIMは設計の企画から施工後まで管理できるシステムで大企業を中心に普及が広まりつつあります。
導入は義務化されていないため、初期投資とランニングコスト、人員の確保で中小企業での運用が課題です。
BIMはCADの場合と同様にモデリングの知識が必要です。

未来は(これからどう進むか)

CAD、BIMを導入することで建築設計の情報を提供し、共有することが可能になります。
2010年に国土交通省が官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始し、2014年にはガイドラインが発表されました。
BIMのように多くの情報を蓄積できる機能性の高いシステムを運用することで、企画、基本設計、実施設計、維持までの工程を一元管理できます。
海外ではBIMの利用を義務付けしている国もありますが、日本では義務化されていないためシステムの浸透に時間がかかるでしょう。

BIMは施行主、設計者、事業者が建造物に対して共通理解を深めることで、発注ミスや施工不良などのトラブルを未然に防げます。
昨今問題となっている違法建築の予防にもつながるでしょう。
3Dモデルを用いた建築設計は可視的で分かりやすく、顧客の満足度を高めることも期待されます。

今後生産年齢人口が減少し、建築業では就業者数の確保が難しくなります。
施行技術の低迷も懸念される中、BIMは建築業界で変革をもたらせるツールとなるでしょう。

世界遺産の住宅1

住宅の世界遺産がある

世界遺産は2018年時点で1092件の登録があります。
その内訳は文化遺産が845件、自然遺産が209件、複合遺産が38件です。
日本の世界遺産登録数は22件です。

世界遺産は遺跡や自然地形、寺院を中心に登録が進められているイメージがありますが、中には住宅も含まれています。
世界遺産に登録された住宅はなんと日本にもあります。
白川郷五箇山の合掌造り集落です。

1995年に認定され、国内で6件目の世界遺産になります。
豪雪地帯で開発が遅れたことが幸いして旧式の建築が残っています。
合掌造りの名称は手と手を合わせて合掌しているような形に見えることが由来です。
飛騨地方の厳しい自然条件を生き抜くための知恵から生み出された建築で、スイスの山小屋に似ています。

家の高さの8割を屋根が占め、屋根は勾配が急な茅葺です。
降雪が多いことから雪や雪解け水を早く流し、日照によって効率的に屋根を乾かします。
世界遺産に登録されている建造物は歴史的価値を有しているだけにとどまりません。
建築の世界に多大な影響与えた建築家が手掛けた建物、住宅も世界遺産に登録されています。

建築家達の設計した住宅1(アントニオ・ガウディ)

アントニオ・ガウディは19~20世紀にかけて活躍した建築家です。
ガウディは1852年にスペインのカタルーニャで生まれました。
独創的で曲線と細かい装飾を取り入れたデザインと自然や生物の形を活かした建築が特徴的です。
ガウディの時代にはコンクリートが存在していましたが、敢えてレンガ造りを取り入れた点は他の建築家と異なります。
レンガ造りにはスペインの歴史と伝統が刻まれています。
レンガへのこだわりは最小の材料で最大の効果を生み出す構造表現主義の表れでもあります。

ポリクロミーもガウディらしさの1つです。
ガウディは建築を第一の造形美術とし、その素晴らしさは光によるもので、色は光の分解から生まれると提唱しました。
多彩色のタイルが取り入れられた建物は色鮮やかで個性的です。

後生になるとガウディはカトリック教徒であることを理由に宗教関連の建築にしか携わらなくなりましたが、数々の偉大な建築物を残し高い評価を受けています。
1984年にアントニオ・ガウディの作品群としてグエル公園、グエル邸、カサ・ミラ、カサ・ビセンス、カサ・バトリョ、コロニア・グエル教会地下聖堂が世界遺産に登録されました。
グエル邸、カサ・ミラ、カサ・ビセンスは住宅として建設され、カサ・ミラは今でも居住が可能です。

建築家達の設計した住宅2(ル・コルビジェ)

ル・コルビジェは近代建築の三大巨匠の一人です。
1887年にスイスで生まれてフランスを中心に活躍しました。
コルビジェという名前はペンネームで、本名はシャルル・エドゥアード・ジャンヌレ・グリと言います。
コルビジェは美術学校に通い芸術の道へ進む予定でしたが、在学中に才能を見抜かれ建築の世界に足を踏み入れることになります。
鉄筋コンクリートの先駆者であるオーギュスト・ペレのもとで建築を学び、見識を深めるために欧州の国々を旅行します。

コルビジェ建築の特徴は機能性を追求したモダニズム建築です。
建築の新しい五原則としてピロティ、自由な平面、自由な立面、水平連続窓、屋上庭園を提言しました。
この五原則を実現した建築物がサヴォア邸です。
サヴォア邸はフランスのパリにあり、鉄筋コンクリート造のダイナミックな空間利用が特徴的な住宅です。

2016年にはル・コルビジェの作品群として7か国にある17の建物が世界遺産に登録されました。
東京上野にある国立西洋美術館もその一つです。
コルビジェは建築家として有名ですが、芸術家としても活躍し絵画と造形物を作品に残しています。

建築家達の設計した住宅3(F.L.ライト)

フランク・ロイド・ライトはル・コルビジェと同じく近代建築の三大巨匠の一人です。
ライトは1867年にアメリカで生まれ、栄華と零落を繰り返す波乱万丈な人生を送ります。
水平で飾り気のないデザインと奥行の深い高級感あふれる建築が特徴的です。

ライトが設計した代表的な建築物にグッゲンハイム美術館、ロビー邸、落水荘などがあります。
日本でも旧帝国ホテルとヨドコウ迎賓館、自由学園、旧林愛作邸の設計などを手掛けています。
この中で当時の様子が残っていて見学できる建物はヨドコウ迎賓館です。

ヨドコウ迎賓館は兵庫県芦屋市にある旧山邑家住宅を指します。
1900年代初頭に灘の酒造家である山村太左衛門の依頼を受けて設計されました。
当初旧山邑家住宅は避暑地として建設された別荘でしたが、設計から建設まで時間がかかりました。

ライトは途中で帰国したため、ライトの設計をもとに遠藤新と南信が建設を行いました。
旧山邑家住宅は1947年に建物の所有者が変わり、株式会社淀川製鋼所の社長宅として購入されて宅地と社員寮として利用されるようになります。
一時取り壊しの危機に見舞われましたが、1974年に国の重要文化財に指定されました。
重要文化財指定にはじめて登録された鉄筋コンクリート造の建物で、1989年にはヨドコウ迎賓館の愛称で一般公開になっています。
ヨドコウ迎賓館は今も改修工事が重ねられて綺麗な形で残っています。
ライトの作品は世界遺産に未登録ですが、滝の上に建つ美しい住宅・落水荘等これからの世界遺産登録の可能性に期待が膨らみます。

地産地消の瓦

瓦の歴史

瓦は中国発祥で紀元前1100年頃の西周の時代に誕生しました。
日本に瓦が入ってきたのは飛鳥時代のことで、百済(朝鮮)から瓦の技術者が来日しました。
粘土から瓦を成形する方法と瓦窯の作り方、瓦の焼き方を習得し、日本でも瓦作りが始まりました。

奈良時代に入ると寺院、宮殿、役所に瓦が用いられるようになります。
聖武天皇が全国に国分寺を作るように命じたことから、瓦の需要も高まりました。
平安時代の瓦はやや衰退期に入ります。
主な原因は戦乱です。
山中に寺院を建立することが増えて瓦の持ち運びができないことや冷え込みの厳しい山の気候に瓦が適応できなかったことも影響しています。

鎌倉・室町時代になると瓦の生産が盛んになります。
仏教の影響で寺院が建立され、日本独自の瓦も作られるようになります。
江戸時代には一国一城令が出され、城の建設が行われなくなったことから瓦の使用が減少しました。
武家と商家の華美な生活を抑制するために瓦葺きも禁止されます。

瓦のかわりに茅葺と板葺が用いられた結果、火事が増えることになります。
瓦葺きの禁止により大火で住居が多数焼失し、犠牲者も数多く出ました。
1720年に徳川吉宗は禁止令を廃止し、瓦葺屋根を奨励します。

本瓦葺き(丸瓦と平瓦とを組合せた瓦の葺き方)は重厚で城郭や寺院向けの瓦であったため、平瓦と丸瓦を組み合わせて一体にした浅瓦が普及し始めました。
浅瓦は軽量で安く、民家にも瓦が用いられるようになります。
江戸時代中期の瓦屋根の普及により、全国的に瓦の製造が産業として確立されました。

明治時代に入ると文明開化により西洋建築が流入します。
西洋のコロニアルスタイルの住宅の屋根には、スペイン瓦等が使われています。
又、昭和に入ると瓦の生産技術が向上し、機械生産によって低コストで量産できるようになりました。

瓦の産地と特徴(三州、淡路、石州)

瓦は日本各地で作られています。
日本の三大瓦の産地として、三州、淡路、石州が挙げられます。

三州は愛知県の西三河地方の旧国名です。
良質な粘土が取れる地域で、粘土瓦の生産が日本一です。
1700年頃に三州瓦は広まりました。
三州瓦は耐火性と耐水性、強度に優れています。
寒さには弱く、寒冷な気候には向いていません。

淡路は瓦製造の歴史が長く、いぶし瓦の生産量は日本一を誇ります。
いぶし瓦とは粘土を焼いた後に灰色の炭素膜を吹き付けた瓦のことです。
銀白色の美しい瓦は建物の景観を引き立てます。

淡路瓦は三大瓦の中で最も低温で焼成されますが、耐火性と耐久性があります。
淡路では釉薬瓦と無釉薬瓦も作られます。

石州は島根県石見地方の旧国名です。
石州瓦は高温で焼成され、色が特徴的です。
瓦の原料の粘土に含まれる鉄分の量で赤みを帯びた色をしています。
硬度が高く丈夫で、寒さや塩害にも適応しています。
石州瓦は寒冷な地域や沿岸部で用いられます。

瓦は地産地消でつくられていた(京の瓦窯元)

瓦は地域ごとの風土、気候、特色を活かして作られることが多く、瓦の窯元や製作工場が昔は全国各地にありました。
屋根の形状や大きさ、建物の景観、宗派、使用目的などによって使い分けられることもある瓦は地産地消で作られていました。
瓦が地産地消である理由は、瀬戸物で割れやすく重さがあるため長距離運搬に向いていないことも関係しています。

京都は千年以上もの間、都が置かれて寺院や役所が数多く存在したこともあり、瓦が数多く作られてきました。
794年に都として開かれた平安京には百万枚以上もの瓦が用いられたと言われてます。
当時の窯では西賀茂瓦窯が有名です。
数年前に見つかったの大山崎瓦窯でも平安京に瓦を提供していたと推測されています。

京都の瓦は京瓦と呼ばれ、700以上にも及ぶ種類があります。
一般的な地瓦に加えて鬼瓦と軒瓦が多く生産されています。
京都の街並みで見かけることがある鍾馗(しょうき)も屋根瓦の一つです。
鍾馗は厳めしい顔つきをしていますが、厄除け・魔除けとして親しまれています。

京都の瓦の歴史は6世紀頃から現在まで続いています。
窯元は代々引き継がれ、古い窯元は数百年になります。
明治以降新しく登場した窯元もあります。

京都の瓦の窯元と嵯峨の窯元(甍技塾・徳舛氏記述)

京都に歴史的建造物としての意匠が感じられる建物が嵯峨から向日町あたりにかけての一帯に存在します。
屋根素材には茅葺と瓦葺が用いられ、庇部分が瓦葺になっています。

庇(ひさし)は窓や入り口などにつけられた小型の屋根です。
外観はほとんど茅葺屋根で、下部に瓦屋根が少し見られます。
屋根の形は入母屋造と切妻造が混在した珍しい形をしています。

入母屋造(いりもやづくり)は代表的な屋根形式で寄棟の上部を切妻にした形で、神社・仏閣などに多く見られます。
切妻造は2面で構成されたシンプルな形です。

江戸時代中期に作られた嵯峨地域の古民家の瓦は、下嵯峨の瓦職人である花野九兵衛が焼いたものです。
軒先の瓦の文様は嵯峨釈迦堂清凉寺の境内の中の薬師寺本堂、亀岡市の丹波国分寺の本堂、高雄梅ケ畑の吉川邸(旧家)の主屋に使用されたものに似ています。

花野九兵衛の焼いた瓦は亀岡市の大圓寺本堂や丹波国分寺の本堂にも使われています。
嵯峨の窯元で焼成された瓦は亀岡に運ばれて建築に使用されたと推測されます。
建築材を地産地消する文化の一例と呼べるでしょう。

襖と障子

襖の由来(歴史)、障子の由来

襖と障子は部屋の開口部についている木製建具のことです。
生活空間を遮断・連結する役割があるほか、風通しと採光を良くする機能を持ち合わせています。

襖の由来は「衾(ふすま)」で、体にかける布製の四角い掛布団を意味します。
襖の原形は板の衝立に絹織物を貼り付けたもので、平安時代には開け閉めができる形状の襖が存在していました。

障子は襖の100年ぐらい後の平安時代末に登場しました。
当時の障子は紙が貼り付けられた仕切りで、襖より簡単なつくりをしています。
高さは現在の障子の半分ほどで、人影が見えないようにするために利用されました。

鎌倉時代になると和紙が量産され始め、障子が普及しました。
細い枠に和紙を貼り付けたもので非常にもろく壊れやすかったため、当時のものはほとんど残っていません。
紙を用いるところは現在の障子と変わりませんが、昔は紙が高級品であったため、しばらく一般民衆には普及しませんでした。
江戸時代中盤に入ってようやく紙の供給が安定し、一般的に障子が用いられるようになります。
今でも障子は和風建築には欠かせない存在です。

襖の制作(下地や枠等)、障子の制作

襖と障子は一見シンプルなつくりですが、伝統的な製法で作ると製作工程が多い建具です。
襖はまず骨組みから作られます。
縦組子と横組子をますに組んだ組子に紙を貼付けてゆきます。
手すき紙、茶塵、桑塵などの和紙を複数重ねるため、手間がかかる作業です。
下地が出来上がったら、一番上の仕上にはふすま紙を貼ります。

ふすま紙の素材は和紙や絹、麻などの布です。
最後に縁と引手を取り付けて完成です。
襖は障子より閉鎖性の高い箇所に用いられ、収納の扉や部屋の開口部に取り付けられます。
続いて障子です。

現在の障子は「明障子」と呼ばれるものです。
骨格部分が湿気や乾燥でゆがまないように、収縮しにくい木材であるスギ、ヒノキが用いられます。
スギ、ヒノキは高価な素材のため、最近ではスプルースという加工性の高い安価な輸入材を使うこともあります。
枠に用いられる組子は1本1本独立した細い棒です。

外枠は框(かまち)と呼ばれます。
木材の組子は互いの材を欠込んで組合せる相欠きといわれる方法で組み立てられます。
その木枠と組子に障子紙を貼ったら、障子の完成です。
障子紙には手すきと機械すきのものがあり、手すきの紙はやや高価です。
最近ではレーヨンやプラスチックを用いた化学合成繊維の破れにくい障子紙も登場しています。

引手や金具、襖紙や障子紙

襖と障子の素材には木材、紙、金具などが用いられます。
一般的に襖と障子はいたってシンプルな造りをしていますが、作り手や住む人の意匠、美意識を表現できる部分でもあります。

通常、襖の引手は円形か長方形をしていますが、様々な形と素材の引手が存在します。
光琳梅、竹節、立鶴、千鳥、瓢箪などの形をしたユニークな引手は遊び心があり、目を楽しませてくれます。
引手の素材には陶器や漆塗りもあり、京都ならではの引手として清水焼を用いられていることもあります。
蝶番や釘隠などの金具は植物や昆虫、家紋などのモチーフを取り入れることで、趣向を凝らすことができます。
襖紙と障子紙も様々な種類があります。
襖紙は大別して和紙と織物が用いられます。

和紙には手すきと機械すきがあり、手すきの和紙は上等とされますが下地を貼る際に注意が必要とされます。
織物には絹やレーヨンなどの糸が織り込まれています。
織物の襖紙は耐久性に優れています。
襖紙は素材と品質、図柄によって価値が決まります。
障子紙も手すきと機械すきの製品があります。

手すきは楮(こうぞ)という植物を使い、伝統的な製法で作られます。
機械すきの障子紙の素材は楮、レーヨン、パルプ、プラスチックなどです。
障子紙は劣化するので張替えが必要になります。
価格をはじめ建物の雰囲気、通気性、耐久性、採光性などを比較して用いると良いでしょう。

襖のいろいろ(これからの襖は?)

平安時代から用いられてきた襖は和風建築には欠かせない建具です。
本襖は伝統的な製法で作られ、複数の工程を重ねて仕上げられます。
絵柄や紋、壁画、金箔を施した襖は美術品でもあります。

明治時代に入り、西洋文化の流入で和洋折衷の住宅が普及し、襖の絵柄も和風と洋風のデザインが用いられるようになりました。
今でも一般住宅の建具として襖は活躍しています。
本襖は下地の貼り付けに手間がかかるため、最近安価な物では、段ボールや発泡スチロール素材が下地に使われることもあります。
アルミ素材の襖も登場しました。

近代の襖は量産できて便利である一方、和紙の柔らかな風合を出すことが困難な点は否めません。
襖の使用が減少傾向にある昨今ですが、元来襖は日本の気候・風土に適しています。
建物の意匠により、京唐紙を使った襖等も最近見直されて使われる機会が、増えてきています。
個人ライフスタイルや好みに合わせて、使い分けると良いでしょう。