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竹小舞と荒壁塗り

日本の家は木と藁と土で作られている

昔の日本の家は、主に木と藁と土で作られていたと言われています。
原始時代の住宅は学校などで習ったかと思いますが、竪穴住居や高床住居のような自然を生かした建物でした。
その頃は今のように生活するための建物としてではなく、外部から身を守るために作られました。
それから「住む」という要素が強くなり、木と藁や土を使って住居空間を作り上げて行ったと言われています。
今でも各地に残されているわらぶき屋根の家は、その名残りの形ではないかと思います。

現在は耐震性、耐熱、耐寒、耐久性が重視され、さまざまな住宅建材が開発されています。
そのため建築の構造材は、「木」か「鉄」或は「鉄とコンクリート」に限られていますが、昔の人々の暮らしを豊かにしたのは、木と土や藁など多くの自然素材だったのです。

竹や土はどこにでもある素材

竹や土は日本全国どこにでもある素材です。
その身近な素材が伝統家屋に使われて来たことを忘れてはいけません。
その優れた材が持つ特質により、竹がさまざまな用途で使われ始めたのが300年ほど前だと言われています。
優れた柔軟性を持っている、そして加工が容易で粘り強さも備えています。
現代で使わている「鉄筋コンクリートの組織構造」に例えられるほどの性能を持っています。
そのため、土壁の下地として最適で格子状に編みこんで構成されたものを「竹小舞」と言います。

壁を作るのに竹小舞と土だけでは強度が不安なため、つなぎとして混ぜたのが「わら」などです。
それを荒壁塗りと言い、左官の壁塗り(仕上げ塗り)の下地となっています。

京町家や民家には使われてきたが(利点も)

竹小舞や荒壁塗りは京町家をはじめ民家の壁(蔵や土塀の壁としても)に使われてきました。
今のようにさまざまな建材が無かった時代の人々の知恵で誕生したこれらの手法は、まさに日本家屋を代表するものです。
(他の国にも同じようなものがありますが)
竹小舞と荒壁塗りの利点は幾つもあります。

  • 耐火性・・・基本的に土であるため燃えにくい
  • 耐震性・・・柔軟性があることで耐震性にも優れている
  • 調湿性・・・土には調湿性がある
  • 断熱性・・・土壁が熱を通しにくい
  • 遮音性・・・竹と土の重み(厚塗)が優れた遮音性を引き出す

他にも、夏は涼しく、冬は暖かいと言う利点があります。

現在は、建築基準法制定以来、土壁の使用は少なくなっている

こんなに優れた土壁ですが、最近ではほとんど目にすることが無くなってきました。
それは「建築基準法」が原因の一端を担っています。

建築基準法には、建築物の用途や構造、設備など建築物に関する最低限の基準が定められています。
昭和25年に制定されたものですが、時代とともにその内容も徐々に変化しています。
国民の暮らしを守るために制定されましたが、その中で土壁の使用ができなくなってしまったのです。
その性能を明確にされてこなかった土壁は使えなくなってしまいました。

名栗仕上

名栗の由来

名栗とは、日本伝統の技法であり、丸太や板の表面に手斧の痕をあえて残し、さまざまな味わいをかもし出すものです。
昔から伝わる伝統技法ですが、現在においては「オシャレ」なデザインとして注目されています。
天保年間、丹波のきこりが六角の柱に施された栗材にたまたま削った柄が素晴らしいとされたことから、名栗との名前が付いたと伝えられています。
ただ、既に奈良時代には名栗と呼ばれる仕上げ方法があったとも言われているので、名栗の由来は実のところ明確になっていません。

名栗仕上とは

主に栗材に施される表面加工を名栗仕上げと言います。
基本的にさざ波のような連続的な凸凹仕上げを指しているのですが、最近ではさまざまな名栗加工がされています。
木材においても、栗材だけでなく、さまざまな種類の木材が名栗加工されて使われています。
伝統的な名栗仕上げをベースに、多種多様な表面加工が登場しています。
手斧の道具にしてもヨキやチョウナ等刃の形も大きさも種々、これらの道具で加工されます。

昔は職人の手で一つひとつ加工がなされていましたが、最近では、機械で表面加工を行うことも可能となっています。
一般的な平滑な仕上げとは違って、動きのある雰囲気を醸し出すことができます。
やはり機械で作られたものよりも、手作業で作り上げられるものの方がより味わいは出るものです。

名栗どこに使われているか

名栗は、古くから門扉や濡縁、腰板など、日本建築のさまざまな場所で使われてきました。
現在は、戸建て住宅はもちろんのこと、ホテルや旅館、商業施設、そして伝統的な社寺などの縁の床材等として用いられることが多いようです。
平なフローリングでは感じることのできない、心地よい足ざわりは、名栗仕上げだからこそ得られるものです。

また、アクセントとして壁や柱などに使われることも多くなってきました。
木の素晴らしさ、木の良さを感じられる名栗仕上げは、和風家屋だけでなく、洋風家屋にも良く似合います。

手の跡を仕事として残す

名栗仕上げは、現在機械でも作り上げることができることを先程説明しました。
確かに機械で作り上げればコスト的にも安価になりますし、完成までのスピードは早くなるでしょう。

しかしどんなに素晴らしい表面加工を機械で施したとしても、やはり職人の手作業にはかなわないと思います。
手で作り上げられた名栗加工の温かみ、表情は、まさに職人の技と言えるでしょう。
耐久性においても、手で作り上げられたものに敵いません。

手の跡を仕事として残す事は、伝統技術を後世に伝えていくことではないかと思います。

木の家と木材(広葉樹)

木の家は、構造は針葉樹が多く使われています。

木の家を造る時に多く使われているのが針葉樹です。
針葉樹として一般的に知られているの種類は「スギ」や「ヒノキ」「マツ」などです。
これらは住まいの中で定番の木材として幅広く利用されています。
針葉樹は、直材で長さが確保できる事そして耐久性がある事、そして加工が容易であるため、家の構造材としてよく使われています。

構造樹としてよく利用されているのは、ヒノキとマツです。スギも一部で使われています。
ヒノキは強度があり、防腐効果に優れており、家の土台や柱としてよく利用されています。
梁材にはただ、ヒノキは高価なためアカマツを利用されることがあります。
アカマツも強度の高い木材として良く使われていました。が、近年虫害による松枯れにより入手が容易でなくなってきています。

一方、内装によく利用されているのが「スギ」です。
比較的安価な木材であり、耐久性もあります。
そして空気の浄化作用があり、ほのかな芳香があり内装材として好まれています。

広葉樹にはどのようなものがあるのだろう

針葉樹だけでなく広葉樹も、木の家に使われています。
住まいに使う木にはさまざまな種類があり、どのような木を選ぶかによって、雰囲気が全く違うものになります。
世界中の広葉樹を見てみると、驚くことに2万種類以上もあると言われています。

日本において広葉樹を代表するものが「ケヤキ」「サクラ」「ナラ」「クリ」などです。
ただ、それらはケヤキを除いて一般的に家の構造体に使われることがほぼありません。
なぜなら、堅木で加工し難いためです。
そのため、広葉樹は主にフローリングなど家の内装に利用されています。

【広葉樹の種類】

  • アオダモ
  • アオハダ
  • アカガシ
  • イタヤカエデ
  • カキ
  • クリ
  • ケヤキ
  • サクラ
  • トチノキ
  • ブナ
  • ミズナラ
  • ツゲ
  • ナラ 等々

身の回りの広葉樹の雑貨や木工品は

広葉樹は種類が豊富で、さまざまな風合いを出すことができるので、雑貨や木工品に利用されています。
ナラ材は、欧米の住宅で取り入れられたり、洋風家具を造るのに使われています。ウィスキーの樽にも使われています。
(海外ではオーク材ですが)

サクラも雑貨や家具などに使われています。
サクラは近年、家具や雑貨を造るのにとても人気になっています。

はじめは木そのものの柔らかい色合いですが、年月とともにまた良い色へ変化します。
こういった経年変化を楽しめるのも広葉樹の良いところです。
雑貨や木工品も経年変化で渋みが出て、良い味わいが出るので長く使って楽しむことができます。

木の家にはどのような広葉樹が似合う(使用例も)

現代の木の家に欠かせないのがフローリングです。
フローリングは基本的に木材が使用されています。(最近では安価な練付集成材によるフロアー材もありますが)
広葉樹は性質として収縮が少ないので、フローロングに適しています。

最近では床暖房を導入する家庭も多くあり、広葉樹ならば床暖房にも適しています。
(が、含水率の高いものはやはり収縮がありすいてきます。)
欧米を中心に人気の高いフローリング材が「ナラ」です。
堅木ですから土足使用の欧米では必然です。

日本でもクリやサクラといった広葉樹が採用されています。
和室にある床の間には、主にケヤキやキリ、マツがよく似合います。
少々高価な種類の木材ですが、上品な味わいの床の間が完成します。
また、最近では、木の家の建具や家具などに、ナラやタモ、サクラ、ブナ、カエデといった広葉樹が使われています。

おくどさんと水屋箪笥

おくどさんの由来

「おくどさん」とは京言葉で竈(かまど)のことを指しています。

竈は別名で「くど」とも呼ばれるのですが、そこに「お」と「さん」を付けて「お竈(くど)さん」と呼ばれています。
つまり竈に敬意と親しみが込められた言葉です。

「おくどさん」は京の人々の暮らしの中心にありました。
人の暮らしを豊かにする「食」に欠かすことのできないもので、大切な煮炊きをする調理場だったのです。

また、「おくどさん」は、土間など家の中で煮炊きなどをおこなう空間自体を意味して使われることもあります。

京都では今でも「おくどさん」との言葉を使う方がいらっしゃいます。
特に年配の方が使う言葉として知られています。

京町家は通り庭(土間)におくどさん

京町家はうなぎの寝床と言われるように、通りから奥に長い作りになっています。
そのため、通り庭と呼ばれる土間におくどさんが鎮座していました。

おくどさんは暮らしの中で大切に使われてきた暮らしに欠かせないものです。
土間の天井は、火袋といい吹抜けになっており瓦屋根にはガラスの天窓があり、調理場に光が差し込むようになっています。
おくどさんや鍋から出る煙を外に出すように土間の天井を高くするのは昔の人の知恵なのです。

昔は京都だけでなく、各地でおくどさんが大切に使われてきました。
ちなみに、京都以外の関西圏では「おくどさん」ではなく「へっつい」と呼ぶこともあります。

現代のシステムキッチンの前身とも言われているおくどさんは、日本を代表する文化の一つと言って良いでしょう。

京町家の火袋(と言われる吹抜け)におくどさんは設置(防火の意味も)

京町家で親しまれている「火袋」とは、吹抜け空間のことです。

火袋は、煙だしと防火上の配慮がなされており画期的な空間です。
火袋は主に土間の上部空間になっており、おくどさんや鍋から出る熱や煙を建物から吸いだすために吹抜けになっているのです。

また、高窓が設置されている事が多く、採光機能も果たしています。
又、緊急の火事の時は、天井から火の粉が飛び抜けて隣屋に飛び火しない構造としています。
火袋は伝統的な防火設備と言って良いと思います。

昔の人々の知恵により誕生した火袋は、生活の知恵からでた必然の住まいの設計ですね。

生活の様式が変わりおくどさんが無くなり(機能的なキッチンに)

おくどさんは食を通して人の暮らしを豊かにしてきた大切なものです。
確かに薪で炊く手間はかかりますが、お米を美味しく食べる事のできるおくどさんは、とても素晴らしいものだと思います。

しかし、生活の様式が変わり、徐々におくどさんが見られなくなってきました。
現在残されている京町家でも、おくどさんの姿を見ることが少なくなっています。

京町家はリフォームされ、現代人が住みやすいように変えられてしまっているためです。
土間がなくなり、そこに設置されるのは機能的なキッチンです。
そのため土間の通り庭が無くなり、京町家の平面が変わってしまいました。

時代とともに変わりゆくのは仕方のないことかもしれませんが、なんだか寂しいような気がしてなりません。
使われなくても飾り物としておくどさんを残されている所も少なくありません。

京町家と箱階段、水屋箪笥

京町家の階段は急な階段が多く

京町家の階段をご覧になった事はありますか。

古い住宅でも見られますが、京町家の階段はとても急なものが多いのが特徴です。
京町家はうなぎの寝床とも表現されている通り、通りから奥に細長い建物となっています。
そのため、階段は隅に追いやられる存在でした。

急勾配はもちろんのこと、幅も狭く、中には押入れなどの中に隠されていることもあります。
壁と一体型になっているものや収納と一体になった階段、箱階段もあります。

うなぎの寝床の平面を持つ京都の住まいの中ではの工夫と言って良いでしょう。

京町家の箱階段・意匠の美と、実用の美がある

京町家でよく見られる階段が「箱階段」です。
開き戸や引き戸などを用い、戸棚が仕込まれた階段のことをそう呼んでいます。

箱階段は江戸時代初期に登場しました。
収納と階段と二通りの利用方法を兼ね備えた実用性のある箱階段は先人達の知恵がしのばれています。

また、箱階段の扉には彫刻が掘られていたり、さまざまなデザイン性のあるものもあります。
意匠の美と実用性の美、それが一体となっています。

現在では階段下収納が主流となっていますが、「和」の家には階段下収納よりも見せる箱階段がとても良く似合います。

水屋箪笥も京町家の意匠の一つ

京町家の意匠は箱階段だけではありません。
「水屋箪笥」もまた京町家の意匠の一つです。

水屋箪笥とは食器棚のことです。
京町家の台所は通り庭と呼ばれる土間にあることが多く、水屋箪笥はその周辺に置かれていることが多いものです。

水屋箪笥は長い年月、暮らしの中で使い磨かれながら大切にされてきました。
京町家の一空間を引き締めるその雰囲気は作り手である職人の思いが込められているものです。

水屋箪笥の構造は、角材の組枠「框組(かまちぐみ)」に板を張って用いられています。
背の高いものは、上下2段に分離できるものもあります。
今も町家の大事な一品として存在感を増しています。

京町家の新築でも箱階段や水屋箪笥がなくてはならない意匠

箱階段や水屋箪笥は京町家でずっと使われてきたものであり、京町家の意匠としてもになくてはならない存在であり、京町家の歴史と文化を後世に伝えるものです。
昔の人々の知恵と職人の技術により誕生した箱階段や水屋箪笥は、京町家では現在も健在です。

京町家を訪れると今でも箱階段や水屋箪笥が残されています。
完全にリノベーションされて残されていない場合もありますが、京の伝統文化を伝えるものとして今でも大切にされています。

また、実際に京町家で使われていた箱階段や水屋箪笥が販売されていることもあります。
新築の家にあえてそれらを置きたい、そう考える方も増えているようです。

最近では京町家が宿泊施設(ゲストハウス)として利用されているところも多く、箱階段や水屋箪笥は京都の町家の住文化や生活を知る上で、観光客にも人気となっているようです。