近年では、価値観の変化にともなって「スローライフ」な過ごし方が注目を集めています。
もしかすると毎日を慌ただしく過ごしている現代人にとっては、「スローライフ」と聞いてもあまりイメージがつかないかもしれません。
「スローライフ」とは、ストレスフルで忙しい生活を見直すことで、ゆとりのある心地のよい生活をしようという新しいライフスタイルの選択肢です。
そのようなスローライフの流れは、家づくりのスタイルにも影響しています。
たとえばゆっくりと時間をかけた家づくりである「スローハウス」な考え方です。
ここでは、現代社会で求められる「スローライフ」と、家づくりである「スローハウス」についてわかりやすく説明します。
●現代社会で求められる「スローな暮らし」
現代社会では、さまざまな価値観により日常の過ごし方についても多様化してきています。
高度経済成長期以降は、大量生産・大量消費な暮らしが求められる時代でした。
しかし近年は、これまで忙しく過ごしてきた生活から変化が求められる時代になりつつあるのです。
たとえば、ゆっくりとした過ごし方が豊かさにつながるという「スローライフ」な考え方です。
「スローライフ」の言葉がもつ意味や意義、「スローライフ」に含まれる「スローフード」や「スローフラワー」といった考え方についても紹介します。
・スローライフとは
物事を落ち着いてゆっくりとしたペースで楽しむ生活スタイルのことを「スローライフ」と呼びます。
スローライフの特徴は、速さや効率を重視するのではなく、自分のペースを大切にする点にあります。
たとえば朝はゆっくり起きて、手作りでバランスのよい健康的な朝食をとります。
また仕事では結果よりも過程を優先して、休憩時間もしっかりとリフレッシュします。
帰宅後は日々の出来事を家族とゆっくり会話しながら、就寝前にはリラックスした時間を過ごします。
スローライフとは生活のさまざまな場面で、自分のペースにあわせたゆとりのある時間という豊かな暮らしを目指す考え方なのです。
・スローフードとは
スローフードとはゆったりとくつろぎながら、地域の新鮮な食材を五感で味わうスローペースな食事スタイルのことです。
早さや効率性を求めずに食事をすることにより、食材本来の美味しさを感じて、食事の時間を楽しく過ごすという考え方です。
たとえば食材選びでは、無添加で地産地消の食材を積極的に活用します。
また料理中には食材本来の味を活かすように、一つひとつの手順をしっかりと守るのも大切です。
さらに食事をするときの環境にこだわることも必要です。
落ち着いた空間で親しい家族や友人と過ごすことにより、ゆったりとリラックスした食事を楽しむのです。
スローフードの対極がファストフードですね。
・スローフラワー
スローフラワーの特徴は自然の花を活用して、花びらが散りゆくまでの美しさを楽しむ点にあります。
スローフラワーで使われる花は、四季折々の自然の花が用いられます。
ただし、切り花のように一時的な美しさを求めることはありません。
自然の風景に近い花々を用いることで、まるで自分が自然に溶けこんだような雰囲気を味わうのがスローフラワーの特徴です。
たとえば飾り付けについても、まるで花が生命力を発揮しているかのような目線が大切にされます。
新鮮な花が衰えて、やがては枯れていくような変化についても、花そのものがもつ、新たな魅力としてとらえられているのです。
このように「スローライフ」な暮らしでは、「スローフード」や「スローフラワー」といった考え方が大切にされています。
忙しい現代社会においては、あえて生活にゆとりを取り入れることが、新たな価値観としてクローズアップされてきているのです。
●高度成長期はまるでファストフードな社会
高度経済成長期当時の日本は、経済発展が最優先課題とされ、すべてにおいてスピードが最優先の時代でした。
住宅建設においても迅速性が求められるため、大量生産と大量消費の時代だったといえます。
この時代の建築資材は、コンクリートと鉄が主体となり、木材は二の次でした。
建設そのものも、工場生産のプレハブや手軽に建設できるユニットハウスが主流です。
家づくりの現場は、鉄骨の組み立て音が響き渡る騒音に包まれている状況でした。
効率最優先・コスト最優先の住宅生産では、地域の伝統や文化への配慮は不足していました。
そのため手間と時間をかけるという「日本のものづくり」における家づくりの精神からはかけ離れた状況だったといえます。
当時はスピード感こそが最高だとされ、まさにファストフードのような家づくりが求められていたのです。
●スローハウスな家づくりとは
近年はスローライフの考え方をもとにして、住宅や家づくりにおいても「スローハウス」という考え方が浸透しつつあります。
スローハウスとは昔ながらの在来技法により、木と土と職人による手仕事などゆったりとした時間をかけて、丁寧に家をつくるという手法です。
ここではスローハウスな家づくりについての特徴を紹介します。
・伝統工法の特徴とスローハウス
伝統工法とは、日本では古くから使われてきた工法です。
伝統工法には自然素材を活かしながらも、日本の気候風土にあわせた住まいづくりの昔ながらの知恵が詰まっています。
スローハウスは、伝統工法を活用してゆとりのある暮らしができる家づくりをしようという考え方です。
たとえば地元で育った木を活用した地産地消の住まいや、広々とした場所に人々が集まるように考え抜かれた設計です。
環境にもやさしい住まいをつくることで、家族みんなをぬくもりのあふれた空間が包み込んでくれることでしょう。
・自然素材を使ったスローハウス
スローハウスは自然素材を活用することで環境への負担が少なく、過ごしやすい住まいを手に入れやすくなります。
また伝統的な技術を活かすことで、ぬくもりある空間を演出します。
地域の気候風土に合った地元で産する素材を使い、職人の経験や技術による手仕事での家づくりが、より街並にとけこむ建物をうみだします。
・経験豊富な職人による手仕事も魅力
伝統工法の建築工程では、木工や左官など職人の手作業による技が活かされます。
理想的な住まいのイメージに近づけていくために、熟練の技能をもつ職人が自然の素材を肌で感じながら、一つひとつの素材がもつ味わいや魅力を引き出します。
ゆっくりと熟成、完成させていくスローハウスは、きっと自分らしい理想的なスローな暮らしを実現させてくれるはずです。
ゆったりと自分のペースで過ごしてみると、素材として使われている自然素材のぬくもりを肌で感じとりやすくなります。
スローハウスで過ごすことで、これまで以上に家族や地域とのつながりを育めるようになることでしょう。
生活のスピード化が進む現代社会においては、家づくりこそゆったりと時間をかけるべきだとする「スローハウス」な考え方が注目を集めています。
スローハウスは、地域の気候風土にあわせた素材を用い、木工や左官などの職人の手作業によって、丁寧に家づくりをする方法です。
生活の中で忙しさに流されがちな今こそ、ゆとりのある生活を目指した家づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。
「スローハウス」な住まいでは、食事や花を楽しむといった「スローフード」や「スローフラワー」が、豊かな時間と生活をつくりだします。
職人の手仕事によってつくられたこだわりのスローライフな暮らしは、私たちが忘れかけているような昔ながらの住まいづくりによって、親しい家族や友人と過ごす大切な時間を思い出させてくれるのです。