京都市S邸「京町家のリノベーション」竣工しました

京都市S邸「京町家のリノベーション」工事が竣工しました。

京都の街中によく見られる連棟の京町家のリノベーションです。
当初は新築で建て替えなどもご検討されていましたが、現況面積の確保が難しいなどの問題もあり、
代々住み継がれた大切な京町家を、リノベーションをすることで次の世代が住まいやすく、改修をしました。

今回この京町家の建物を住み継ぐ上で、気になる点として、耐震性、断熱性、連棟であるため音の問題、
そして現況の間取りでは現代の生活にそぐわない、などがありました。
今回は建物をスケルトンとし、元のカタチは随所に残しながら改修をしました。

耐震性に関しては、土葺きの瓦屋根の土を下ろし、桟瓦葺きとして葺きなおして軽量化を図っています。
また、野地、2階の床構面の補強、劣化柱や礎石の補修も行いました。

音に関しては、近くに大通りもあることから、道路に面した正面の窓には内窓を設置しました。
もともとなかった断熱材を床、壁、天井に充填していますので、こちらも効果がありそうです。

古くからの京町家は隙間が多く、寒いのも問題です。
冬場は暖房器具がフル稼働いという住まいも多いと思います。
今回は、断熱材の充填と、サッシをペアガラスに入れ替えることで、高断熱化、省エネ化も行いました。


屋根は瓦で葺きなおすことで、建物の面影はそのままに、街並みに溶け込んだ外観になりました。
木製の出格子は防犯と目隠しの機能と意匠的にも従前の形を復元するために設けました。
建物に馴染むように、古い柱などの色に合わせ塗装しています。
格子からの優しい灯りが通りを照らす風情は、落ち着きを感じさせます。

 
建物の中は、現代の生活に合うように、水回り設備(キッチン、浴室、洗面、トイレ)の入れ替えも行いました。
キッチンがある部分は、もともと土間(通り庭であった)になっていた部分に床を貼っています。
京町家は室内が暗いイメージがありますが、今回のリノベーションで全体的に明るく、スッキリとした印象になりました。
洗いを施した素敵な水屋は、もともとこちらの建物で使われていたものです。
家具なども大切に受け継いで再利用されています。

 
客間として、4.5帖の和室は残しました。
床の間は左官仕上げとし、床柱は北山出絞丸太、落とし掛けはは赤杉、地板は肥松、框は面皮漆塗り、前板は桧です。
畳は琉球畳で、モダンなイメージになっています。


階段は上り下りがしやすいように、勾配を緩やかにし、かけなおしました。
段板はタモ材です。


2階は和室から洋間へとリノベーションしました。
道路側の窓には音を考慮し、インナーサッシが設置されました。
寝室にはウォークインクロゼットを併設し、収納スペースを充実させています。
利便性を考え、2階にもトイレを設置しました。


玄関、取次部分の大和天井は既存のまま残しています。
玄関土間は約一坪あり、駐輪スペースも兼ねています。
玄関からは取次部分、キッチン部分と、2方向の動線を確保しています。
土間部分は天井が高いので、広々と感じます。

今回、完成した建物を見て、建物の面影を残すリノベーションは、京都の街並みに調和すると改めて実感しました。
お施主さまには、このような機会をいただき、大変感謝しています。
S様、この度は誠におめでとうございます。

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最終更新日:2021年2月12日投稿日:2021年2月12日