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森のようちえん

代表的な幼児教育の一つとして近年注目を集めている「森のようちえん」をご存じでしょうか。
親世代の方は、「おさんぽ会」などの青空教育を経験した方もいるかもしれません。
日常生活で触れあう自然が少なくなっている現代社会では、とくに子どもたちが自然と触れあう機会が大切になってきています。
今回は、子どもたちの豊かな感性を磨くために、自然との触れ合いを大切にしているこの取り組みについてご紹介します。

「森のようちえん」の誕生

1950年代に、デンマークにおいて森で保育をしたことが「森のようちえん」の発祥とされています。
初めはほんの小さな取り組みだったことでしょう。
それが北欧諸国を中心に話題となり広がり、2000年にはデンマーク以外にドイツにまで「森のようちえん」は広がっていきました。

日本では、昭和の頃におこなわれていた「おさんぽ会」などの自然の中を散歩する青空教育が有名です。
その参加者たちが集まって2008年に設立されたのが「森のようちえん全国ネットワーク」です。
2017年には法人化され、「NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟」となりました。

「森のようちえん」とは

これまでの幼稚園教育は建物の中で過ごすことが主流でした。
しかし「森のようちえん」では、自然の中で活動するスタイルをメインとしています。
社会性や想像力、豊かな感性や人間性を育むために、主体的な遊びや学びを子どもたちに促すことを目的としています。

「森のようちえん」という名前に込められている想いについて紹介します。
「森」とは、一般的な森としてだけではなく、山、川、野山、里山、畑や公園など子どもたちが自然と触れあえる場所を広く意味しています。

また「ようちえん」とは、一般的な「幼稚園」としてだけではなく、託児所や保育園、学童保育、子育てサロンなど子どもが集まる場所を含んでいます。
0歳から7歳ぐらいまでの子どもを対象とした幅広い活動を意味しています。

「森のようちえん」では、自然環境が豊かな場所で、子どもたちがのびのびと、幼い頃から多くの時間を過ごしています。
このように過ごした子どもたちは、きっと自然環境への関心を深く持った大人に育っていくことでしょう。

幼児の知識吸収力

子どもの感性や知識の吸収力には、驚くことがたくさんあります。
大人の考えで役に立つ能力を身につけさせようと思っても、なかなかうまくいきません。
これは、大人の想像力では子どもたちの柔軟な感性にかなわないためといえるでしょう。

自然の中には、子どもたちが遊びを通じて学ぶ機会がたくさんあります。
「森のようちえん」で育った子どもたちは、一人ひとりで異なる個性を伸ばしながら、少しずつ成長していきます。

とくに大人たちが遊びの場を特別に作って提供しなくても、子どもたちは、「森のようちえん」で思い思いに過ごします。
森の木々、川のせせらぎ、たくさんの虫などは、どれも子どもたちにとっては遊びで触れあうものです。

このような経験をした子どもたちは、きっと日本の将来にとって大切な人材に育っていくことでしょう。

京都の森のようちえん

「森のようちえん」では、「森のようちえん団体安全認証制度」という仕組みが利用できます。
2021年5月現在でこの認証を受けている団体は、全国に64団体あります。

団体が活動する形としては、さまざまです。
毎日森で過ごす「通年型」、一部に森のようちえん活動を取り入れる「融合型」、定期的に開催する「行事型」というものがあります。

私たち竹内工務店がある京都にも、森のようちえんはいくつかあります。
そのうち京都では「一般社団法人森のようちえん どろんこ園」、「里山保育やまぼうし」、「特定非営利活動法人 森守協力隊 森のようちえん もりもり京北」の3団体があります。

基本的には「森のようちえん」としての大切な考えをもとに活動されていますが、それぞれの団体でやや活動内容は異なります。
入会を検討されているご家庭は、ぜひ見学などに足を運んでみられてはいかがでしょうか。
きっと家庭で過ごしているだけでは見られない新しい子どもの姿を再発見できることでしょう。

―――大人が与える、教える、「容器を満たす」のではなく、子供たちが、森という包容力のある、魅力的で多様な空間で、自らの好奇心と、他の仲間との相互作用のなかで、
自発的に遊んで体験し、学び、自己形成をしていく。森の幼稚園の教育コンセプトの核心にあたるものだ―――

池田憲昭著 「多様性」より

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