8月19日新建築社発行 新建築・住宅特集2025年9月号 横内敏人建築設計事務所様の設計で弊社で施工させていただきました「安多洛舎」が掲載されました。
特集:建築家の自邸 「安多洛舎」 P028~P039
8月19日新建築社発行 新建築・住宅特集2025年9月号 横内敏人建築設計事務所様の設計で弊社で施工させていただきました「安多洛舎」が掲載されました。
特集:建築家の自邸 「安多洛舎」 P028~P039
「テロワール」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、地域の土壌、気候等の産地特性を表す言葉として用いられています。
特に農産物(ワイン、果物、野菜)等が地域特有の固有の味を出すように、特別な個性として重宝され使用されています。
建築の世界でも「地産地消」と「気候風土適応」という考え方があります。
その地域で採れた木材や石、土などの素材を、地域の建築物に使用し活かす取り組みです。
全国的な地産地消素材の例と共に、京都での建築に使われる素材を考えてみます。
建築における地産地消では、その地域で生まれた資源(産出された材料)を地元の建築に活用しています。
もともと地元の土地で育った材(産出された材料)は、特性がその地方の気候に適した家づくりに向いているのです。
地方で産出され使われている材料には、魅力的な素材が少なくありません。
地元の山で育った杉や桧材は、地元で加工しそのまま住宅やその他建築に使用されています。
伐り出した木材がそのまま地域の住まいの中で使われており、地域の風土に自然に馴染みやすく、人工的に作られた素材にはない温もりを私たちにもたらしてくれています。
土地の気候に適した素材は、耐久性と快適性を両立します。
寒冷地の木材は生育が遅く密度が高く強度もあり、温暖湿潤な地域の素材は通気性や調湿性を発揮します。
材木を使用した壁は、梅雨時に湿気を吸込み、冬には放出し乾燥をやわらげるように暮らしを快適にしてくれます。
素材を地元で調達すれば輸送コストを抑えられ、二酸化炭素の排出量も減少します。
さらに伐採、加工、施工といった工程が地元で行われるため、地域の職人や企業に利益が循環します。
地元の素材を使った家づくりは、そのまま地域の未来を支えることにもつながるのです。
日本各地には、その土地ならではの建築素材が豊富にあります。
木材以外にも石や瓦、土、紙などの素材です。
それぞれの材が持つ特徴や魅力などをご紹介します。
・木材とその魅力
秋田県北部で育つ「秋田杉」は、まっすぐに育つために加工がしやすく、すっと通った木目の美しさが住まいに上質な印象を与えます。
奈良県吉野地方の「吉野杉」は、木目が細かく詰まっており、静かでやわらかな質感が室内を落ち着いた雰囲気に包み込みます。
長野県木曽地方の「木曽桧」は耐水性が高く、香りの良い素材です。
たとえば洗面室や浴室などの水回りに使用すると、木の香りがふわりと立ちのぼり、癒しの空間を演出してくれるはずです。
これらの木材は時を経るごとに色味が深まり、住まいに少しずつ馴染んでいくため、見た目の変化も楽しめます。
・石材や瓦の味わい
栃木県宇都宮市で採れる「大谷石」は、白黄色でザラザラとした質感の軽石凝灰岩です。
やわらかくて加工しやすいため、石堀や蔵などによく使われています。
また長野県諏訪市の「諏訪鉄平」は独特の風合いと高い耐久性により、屋根材や庭の敷石以外にも、建築物全般に幅広い用途で使用されています。
瓦屋根は高い断熱効果が期待できる素材です。
とくに愛知県の「三州瓦」、島根県の「石州瓦」、兵庫県の「淡路瓦」は、日本三大瓦として知られています。
意匠性に優れた三州瓦、耐塩害性に優れた石州瓦、銀色の風合いの淡路瓦などそれぞれで見た目や機能に特徴があります。
・土や紙、塗料の工夫
土の素材としてよく使われているのは、「シラス」、「しっくい」、「珪藻土」です。
たとえば火砕流からできたシラスを壁に使うと、断熱性が高くなり、快適な室内環境を保ちやすくなります。
また石灰石からできたしっくいは、白い美しさと防火性を兼ね備えており、昔から外壁や屋根瓦の接着などに使われてきました。
藻類の堆積物から作られた「珪藻土」には、高い調湿性があり、梅雨や冬場の結露やカビ対策に向いています。
「美濃紙」は、繊細な風合いで耐久性の高い素材のため、障子や壁紙に用いれば光をやわらかく通してくれます。
岡山吹屋で産する土・酸化鉄「弁柄」は、防腐や防虫に役立つため、この地方では木部や壁などに使用されている素材です。
これらの素材は見た目の美しさだけでなく、調湿性や断熱性などの暮らしを快適にする性能にも優れています。
こうした素材を選ぶことで、地域の風土性、デザイン性と機能性を兼ね備えた住まいを形づくっています。
京都には、昔から育まれた文化や歴史と関係性の深い素材が数多くあります。
それでは木や石、竹や土、和紙や織物などの京都における地産地消の素材について考えてみます。
京都と聞いて、和風な町並みを思い浮かべる方も多いことでしょう。
京都にある和室には、杉や檜などの素材がよく使われています。
京都産の杉や桧は、調湿性に優れているため、夏の蒸し暑さや冬の乾燥をやわらげてくれます。
「北山杉」の磨き丸太は、まっすぐで自然の丸太をそのままに使うので、和室の柱や梁、垂木等、数寄屋建築に多く使われてきました。
が、現代的にも部屋の一部に使用することでその空間が凛と引き締まることでしょう。
「鞍馬石」は、全国的に知名度の高い銘石です。
庭石として使用されることが多く、落ち着いた色合いが樹木とよく調和します。
「白川砂」は、従来は京都・白川上流で採取された白砂を意味していました。
枯山水の庭に使われている材で、と白い色と細やかさが他の材(石、苔)と空間を引き立てます。
竹は昔から伝統的な建築素材として使用されてきました。
小舞縄を使って縦横に竹を編み込み、塗壁の下地として利用する「小舞下地」、天井の仕上げ材としての「網代」や垣根としての「竹垣」が有名です。
京都において産する土は「稲荷山黄土(稲荷土)」と「聚楽土」です。
「稲荷山黄土(稲荷土)」は、京都の伏見深草で採取される黄土のことです。
黄土の中でも最上品と言われている稲荷山黄土は、土壁によく用いられています。
「聚楽土」は京都の聚楽第周辺で採取される土のことです。
落ち着いた上品な茶色の色合いが、茶室によく馴染むと活用されています。
土壁は、土に砂や藁を混ぜて水で練ったものを塗り固めた壁のことです。
調湿機能や防火機能などの働きがあります。
・和紙・塗装・織物の彩り
「黒谷和紙」は京都府綾部市黒谷町周辺で作られた紙のことです。
職人による手漉き作業により、一枚ずつ丁寧に作られています。
強くて破れにくく、京都市にある元離宮二条城の襖などの文化財にも使用されています。
京都南山城地区で作られている「柿渋」は、茶色がかった独特の風合いが人気です。
補強や防水、防腐などの働きにより、主に塗装品の塗料として使用されています。
日本の歴史的な食器として使われている京漆器は、天然木材と漆から作られています。
「漆」は耐久性があり、抗菌性や防腐性などもある優れた素材です。
漆塗りを施した木材は、汚れや傷がつきにくくなり、水拭きだけも長持ちすることが知られています。
京都の西陣地区で作られた「西陣織」は、さまざまな種類の糸によって彩られた美しい模様が特徴です。
洗練された意匠は、近年ではインテリア用途にも使用されており、日常の空間に京都らしい華やかさを添えます。
京の素材を取り入れた住まいは、他にない魅力を持ち京都らしい風合いと品格を感じさせます。
素材の一つひとつには、京都ならではの歴史や文化があり、日常の中でその魅力を楽しめる住まいになります。
地産地消の素材を使った住まいは、地域の気候に適しており、自然の風合いが暮らしに彩りを添えてくれます。
地産地消は、地域経済の活性化や輸送エネルギーの削減にもつながり、人にも環境にも優しい方法です。
私ども竹内工務店では、京都の素材を活かした地産地消の住まいづくりを通じて、快適で豊かな暮らしを提案しています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
「京都の木の家」「注文住宅」の竹内工務店ブログです。
京都市左京区の閑静な住宅地で、「F邸」の建て方が行われました。
東西に奥行きのある敷地に母屋と離れで構成されたお住まいです。
「建て方(たてかた)」は、木造建築において大工工事が始まる節目でもあります。
基礎の上に土台、柱や梁を組み上げ、建物の骨格が一気に姿を現す瞬間は
図面で描かれていた家が、実際の空間として立ち上がるダイナミックな工程で
最後に棟木を上げて棟上げとも言いい家づくりの特別な場面です。

東西に奥行きのある敷地での計画です。
建て方は、まず敷地の奥から始まり、順番に手前へと進めていきました。
建物の規模が大きいため、通常よりも建て方の日数がかかり、大工さん5人で4日の工程となりました。
下の写真は基礎に土台が乗った状態です。

朝から何便かに分けて木材が現場に搬入され、着々と組み上がっていきます。
大工さんにとっては力仕事の連続であり、同時に気の抜けない緊張の場面が続きます。
胴差と床梁を一つひとつ、慎重に組み上げていきます。

大きな木材を納めるために「掛矢(かけや)」と呼ばれる大きな木槌を使い、力強く叩き込んでいきます。
木を打つ音が響き渡り、木と木がぴたりと組み合わさる様子は、見ていても気持ちのよい瞬間です。

建て方がスタートして4日目、建物の骨組みが見え
無事に上棟することができました。
F様 この度は誠におめでとうございます

竹内工務店の家づくりでは、土台や柱や梁といった骨組みになるべく無垢材を使用しています。
今回のF邸では、大きな梁などは一部松の集成材を使用していますが、その他土台は桧、柱は杉です。
構造材は家が完成するとほとんどが見えなくなりますが、
しっかりと乾燥させた無垢材は、強度が高く耐久性にも優れていますし、
木は呼吸する素材なので、空気中の湿度を調整し、家全体が快適な空気環境となります。
今、現場は木の香りに包まれています。

登り梁は化粧現しとなりますので、傷かつかないように気を付けて組み上げています。

母屋の屋根の梁の一部は、複雑な形状のためプレカット加工できずに大工が手刻み加工をしています。

今後も現場の様子などお伝えしますのでお楽しみに!
設計は高橋勝設計事務所さまです。
以前に施工させていただいた設計は高橋勝設計事務所さまの新築注文住宅の施工例はこちらをご覧ください
京都市右京区「北嵯峨の家(O邸)」
「京都の木の家」「注文住宅」の竹内工務店ブログです。
京都市北区、落ち着いた住宅街が広がるエリアで「M邸クリニック併用住宅」の新築工事が進行中です。
上棟から約1か月半が経ち、すっかり建物が形になってきました。
建物は中心に庭を配置したコの字型のプランで、庭を挟んで片側がクリニック、もう片側が住宅という構成になっています。
中庭を介して光や風が通り抜けるように計画されており、暮らしの場と診療の場が程よい距離感でつながる設計です。

住宅の2階部分は、南側からの採光がしっかり確保されており、自然光が室内に広がります。

こちらは住宅の2階部分のスカイコートです。
外に開きつつもプライバシーを守れるよう杉の格子を取り付ける予定です。

無機質になりがちなクリニック空間も、今回は木造らしい温かみが感じられる設計になっています。
天井には木質パネルを取り入れ、建具や造作家具も木で統一されています。
モダンな雰囲気の中に木の質感が調和し、患者さんにとって落ち着きと安心感のある空間になりそうです。
こちらは待合の部分です。
大きな窓が室内と外をつなぎ、自然光が差し込むことで、リラックスしてお待ちいただけるスペースになりそうです。

東西に延びる廊下に面して診察室やレントゲン室が配置されており、クリニック内部の動線がすっきりと整理されています。

クリニックの部分は診察室が中心にあり、向かって左が患者さん用の通路、右側がバックヤードになっています。
両サイドの壁には高窓が設けられており、自然光が差し込み、気持ちの良い空間になっています。

外壁は東西南北すべてジョリパット仕上げになります。
現在はモルタルの下地として木摺り下地が組まれた状態です。
ジョリパットは、柔らかな凹凸感と温かみのある風合いが特徴で、光の当たり方によって表情が変わるのも魅力です。
上品で落ち着いた印象の外壁になりそうで、こちらの仕上がりも楽しみです。

軒裏は杉板を貼って仕上げていきます。
屋根周りも木の風合いが感じられる意匠となる予定で、外観に温かみと落ち着きを与えるデザインです。

設計は空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所さまです。
以前に施工させていただいた空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所さまの新築注文住宅の施工例はこちらをご覧ください
京都市伏見区「M邸新築工事」
双ヶ丘の庵~平成の京町家~
京都市伏見区「M邸新築工事」
京都市右京区「S邸新築工事」を施工事例に掲載しました。
ぜひ施工事例にてご覧ください。
設計は鎌田秀章建築設計事務所さんです。

施工事例はこちら京都市右京区「S邸新築工事」
京都市右京区「S邸新築工事」のブログ記事はこちらをご覧ください。
京都市右京区「S邸新築工事」竣工しました。